「警察の立ち入り検査で違反を指摘された」「このままだと営業停止になるかもしれないが、お店を何日間閉めなければならないのか?」
現在、このような強い不安を抱えている店舗経営者や管理者の方は多いのではないでしょうか。店舗の営業が止まれば、売上がゼロになるだけでなく、家賃の支払いや従業員の離職など、お店の存続に関わる致命的なダメージに繋がります。
この記事では、風営法に基づく営業停止期間がどのように計算されるのか(量定の仕組み)と、処分を少しでも軽くするために今すぐ取るべき対策について、わかりやすく解説します。
風営法違反における「営業停止処分」とは?
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)に違反した場合、各都道府県の公安委員会から行政処分が下されます。まずは、営業停止処分がどのような位置づけなのかを正しく理解しておきましょう。
指示処分・営業停止・許可取消しの違い
風営法違反による行政処分は、違反の重さや悪質性に応じて主に3つの段階に分かれています。
- 指示処分: 最も軽い処分です。「違反を改善しなさい」という行政指導であり、営業自体は続けることができます。
- 営業停止処分: 一定期間、営業をストップしなければならない処分です。店舗の運営に直接的な打撃を与えます。
- 許可取消し処分: 最も重い処分です。風俗営業の許可そのものが取り消され、その後5年間は新たな許可を取ることができなくなります(事実上の廃業宣告です)。
最長で「6ヶ月」の範囲内で決定される
風営法第26条第1項に基づき、営業停止処分の期間は「最長で6ヶ月(180日)以内」と定められています。すべての違反が一律で数ヶ月止められるわけではなく、違反の内容や店舗の状況に応じて、この範囲内で具体的な日数が決定されます。
営業停止の期間を決める「量定」の基準と計算方法
「うちの店は結局何日止められるのか?」を決める計算の仕組みを「量定(りょうてい)」と呼びます。
公安委員会は、担当者の気分で日数を決めているわけではありません。「行政処分の基準」という明確なルールに則って日数を算出しています。
基礎期間(ベースとなる日数)の決定
まず、違反行為の種類ごとに「基準となる日数(基礎期間)」が設定されています。
例えば「深夜時間外営業なら〇日」「客引き違反なら〇日」というように、処分のスタートラインとなる日数が決まります。
加重事由・軽減事由による調整(+/−)
基礎期間が決まったら、次に店舗の個別事情を考慮して日数の「足し算・引き算」が行われます。
- 最近3年間に同一のの処分事由により行政処分に処せられたこと。
- 指示処分の期間中にその処分事由に係る法令違反行為と同種の法令違反行為を行ったこと。
- 処分事由に係る行為の態様が著しく悪質であること。
- 悔悛の情が見られないこと。
- 付近の住民からの苦情が多数あること。
- 結果が重大であり、社会的反響が著しく大きいこと。
- 16歳未満の者の福祉を害する法令違反行為であること。
従業者の大多数が法令違反行為に加担していること。
- 他人に強いられて法令違反行為を行ったこと。
- 営業者(法人にあっては役員)の関与がほとんどなく、かつ、処分事由に係る法令違反行為を防止できなかったことについて過失がないと認められること。
- 最近3年間に処分事由に係る法令違反行為を行ったことがなく、悔悛の情が著しいこと。
- 具体的な営業の改善措置を自主的に行っていること。
【違反行為別】営業停止期間の目安(量定の相場)
検索される方が一番知りたい違反行為ごとの「具体的な日数」の目安をまとめました。
許可の取り消し
- 構造・設備の無承認変更、偽りその他不正な手段による変更に係る承認の取得
- 名義貸し禁止違反
- 遊技機の無承認変更、偽りその他不正な手段による遊技機の変更に係る承認の取得
- 年少者接待業務従事禁止違反
- 年少者接客業務従事禁止違反
- 営業禁止区域・地域における店舗型性風俗特殊営業の営業(風俗営業者が違反)
- 営業停止命令違反
40日以上6月以下の営業停止命令(基準期間は3月)
- 不正の手段による認定の取得
- 遊技機規制違反
- 客引き禁止違反
- 客引き準備行為禁止違反
- 年少者の立ち入らせ禁止違反
- 未成年者に対する酒類・たばこ提供禁止違反
- 現金等提供禁止違反
- 賞品買取り禁止違反
- 広告・宣伝規制違反に対する指示処分違反
20日以上6月以下の営業停止命令(基準期間は40日)
- 営業時間制限違反
- 賞品提供禁止違反
- 広告・宣伝規制違反以外の指示処分違反
- 許可の条件違反
10日以上80日以下の営業停止命令(基準期間は20日)
- 構造・設備維持義務違反
- 騒音・振動規制違反
- 広告・宣伝規制違反
- 接客従業者に対する拘束的行為の規制違反
- 遊技料金等規制違反
- 遊技機変更届出義務違反(基準期間1月)
- 従業者名簿備付け記載義務違反
- 接客従業者の生年月日等の確認義務違反
- 接客従業者の生年月日等の確認記録の作成保存義務違反
- 報告・資料提出義務違反
- 立入の拒否、妨害、忌避
5日以上40日以下の営業停止命令(基準期間は14日)
- 特例風俗営業者の営業所の構造又は設備の変更に係る届出義務違反
- 特例風俗営業者認定申請書等虚偽記載
- 照度規制違反
- 遊技球等持ち出し禁止違反
- 遊技球等保管書面発行禁止違反
- 管理者選任義務違反
5日以上20日以下の営業停止命令(基準期間は7日)
- 変更届出義務違反
- 認定証返納義務違反
営業停止命令を行わないもの(指示処分に限り、当該指示処分に違反した場合に当該指示処分違反を処分事由として営業停止命令を行う。)
- 許可証亡失・滅失届出義務違反
- 許可証等掲示義務違反
- 相続承認時許可証書換え義務違反
- 合併承認時許可証書換え義務違反
- 分割承認時許可証書換え義務違反
- 変更届出に係る許可証書換え義務違反
- 許可証返納義務違反
- 認定証亡失・滅失届出義務違反
- 料金表示義務違反
- 年少者立入禁止表示義務違反
- 管理者講習受講義務違反
5日以上80日以下の営業停止命令(基準期間は、各都道府県において定める)
- 条例の遵守事項違反
営業停止の期間を短縮・回避するための対策
警察から指摘を受けた後でも、指をくわえて処分を待つ必要はありません。軽減事由を認めさせ、処分を軽くするための具体的な行動が必要です。
聴聞(ちょうもん)や弁明の機会を活用する
営業停止などの不利益な処分が下される前には、必ず店舗側に言い分を聞く機会が与えられます。
処分の重さによって、「弁明の機会の付与」(書面での言い訳)か「聴聞」(直接出向いての意見陳述)が行われます。ここで「なぜ違反が起きたのか」「現在はどう改善しているのか」を論理的に主張することが、量定を減らす最大のチャンスです。
上申書・反省文による改善の証拠提出
口頭で「反省しています」「もうしません」と言うだけでは警察は信用しません。客観的な証拠が必要です。
- 従業員に対する新たな指導マニュアルの作成
- コンプライアンス研修を実施した際の署名入り記録
- 年齢確認を徹底するためのフローチャート
- 店外の客引きを防ぐための防犯カメラ増設
風営法に強い弁護士や行政書士へ相談する
警察への対応や聴聞の手続きを、経営者ご自身だけで行うのはリスクが高すぎます。
風俗営業の許可や行政処分に詳しい弁護士・行政書士であれば、「その地域の公安委員会がどういった点を重視するのか」という傾向を把握しています。専門家が代理人として介入し、適切な疎明資料を提出することで、営業停止期間が半減したり、場合によっては「指示処分」に留まる(営業停止を回避できる)ケースもあります。
営業停止処分を受けた際の注意点
万が一、営業停止処分が決定してしまった場合は、以下の点に細心の注意を払ってください。
「モグリ営業」は絶対にNG(許可取消しや逮捕のリスク)
「常連客だけならバレないだろう」「シャッターを閉めて裏口から入れよう」といった、営業停止期間中の秘密裏の営業(モグリ営業)は絶対にやってはいけません。
警察は定期的に見回りをしており、これが発覚した場合、「許可取消し」になるだけでなく、「無許可営業」として経営者が逮捕されるという最悪の事態に発展します。
従業員への給与補償と雇用維持
営業が停止している間、キャストやスタッフの収入も途絶えてしまいます。優秀な人材の流出を防ぐためにも、休業手当の支給や、休業期間中のミーティング・研修(※営業行為に当たらない範囲で)を実施するなど、従業員に対する誠実なケアを計画しておく必要があります。
まとめ
- 風俗営業の営業停止は最長6ヶ月(180日)の範囲で決定される。
- 日数は、違反ごとの「基礎期間」に「加重・軽減事由」を足し引きする「量定」によって決まる。
- 処分を軽くするには、聴聞手続き等で「改善の客観的証拠(上申書など)」を提出することが重要。
- 営業停止中のモグリ営業は一発で許可取消し・逮捕に繋がるため厳禁。

