風営法の営業時間規制|許可と届出の間でせめぎ合う悩ましい実態

風営法営業時間のイラスト

もしあなたが、これからガールズバーやスナックを開店しようとしている経営者で、「風俗営業の許可を取ると12時までしか店開けられないし、やっぱり深夜営業にしたほうが長い時間営業できるよね」と迷っているならば、それは危険です!
それは、もしかして
「ガールズバーなら許可取らなくていいし、深夜営業なら何時まででも営業できるから」
「まわりの店、みんな許可なんて取ってないし、スナックだから風営法関係ないでしょ」
って思っていませんか?

いやいや、ちょっと待ってください!
確かに深夜営業でガールズバーなら朝まで営業できるよね・・・でも本当に接待行為は大丈夫なの?
他の店も許可取ってないかもしれないけど・・・赤信号みんなで渡れば怖くないなんて思ってない?

まずは冷静に、この記事を読むことで、風俗営業の営業時間についてどんな罰則が該当するのかがわかります。風俗営業許可を取らずに深夜営業、風俗営業の許可を取って時間外営業、どちらにどんなリスクがあるのかを分かりやすくまとめました。

もしかすると、あなたも気がついていない重大な違反を知ることができるかもしれません。

風俗営業の営業時間

風俗営業の許可を取ると、「深夜の時間帯」に営業してはいけないという規制があります。
24時間、いつでも営業できるわけではないのです。

風俗営業の時間制限

風俗営業の営業時間規制

風俗営業は、条例で午前1時まで延長されている一部の地域を除いて、深夜の時間帯(午前0時から午前6時まで)の営業を禁止しています。

パチンコ店は、条例で午後11時までとしているところが多いでしょう。
特定遊興飲食店のクラブも、条例の多くは午前5時から午前6時までの間は営業を禁止しています。

唯一、24時間営業できるのが深夜酒類提供飲食店なんです。

風俗営業の営業禁止時間

時間規制のない深夜酒類提供飲食店という選択

風俗営業は原則的に午前0時から午前6時までの深夜の時間帯の営業を規制しています。
そのためキャバクラのように、夜遅くから客が入るような業態は3〜4時間しか営業できません。


とある警察官が、こんなことを言っていました。

この街で、8時や9時から店開けて、0時に店閉めてたらやっていけないことぐらいわかってはいるのよ・・・

「やっぱり警察官もそう思っていたんですね・・・」

わかっているけど、風営法がそうなっているのだから仕方がないわ。私たちも法律に従って『取り締まり』や『立ち入り』をするのが仕事だから。

まさに、そのとおりです。警察官には警察官の仕事というものがあります。

とはいえ、風俗営業の許可を取ると、通常のビジネスモデルからかけ離れた営業時間の制限があるのも困ったものです・・・

そのため、風俗営業の許可を取らなくてはいけない接待行為のあるような店でも、

しばらくは朝まで営業できる深夜酒類提供飲食店営業の届出で様子を見ようかしら

警察から注意されるまでは深夜営業のままで営業しよう

といった、本来の風営法が求めているものとは違う実態が生じてしまうのです。

風俗営業には、なぜ時間の規制があるのか?

経営者にしてみれば、お客さんの気分が乗ってきた頃には閉店しなくてはいけないし、お客さんにしても、もっと楽しく飲んでいたいのに・・・って思ったことありませんか?

それなのに、風俗営業は深夜の時間帯に営業ができません。
では、なぜ風営法が営業時間を制限するのか、その理由をみていきましょう。

風営法の時間規制の趣旨

風営法の目的 営業時間規制

風営法の目的をみると、「だから深夜の時間帯は営業できないのね。」とわかる内容が書かれています。

風営法の1条には、「この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。」と書いてあります。

そもそも営業時間を制限することで、風営法の目的を達成しようとしているため、いくら時代遅れの法律だと言われても、営業時間の制限が完全になくなることはありません。

風俗営業取締法

歴史的には、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の前身となる「風俗営業取締法」を引き継いでいます。
風俗営業取締法というだけあって、風俗営業は取り締まりの対象にある営業でした。

接待のある飲食業、ダンスをさせる営業、ギャンブルについて、深夜の時間帯には、売春や賭博といった風俗環境を害しやすい犯罪が起こりやすいという理由から深夜の時間帯の営業を制限していたのです。

その風俗営業取締法の制限を未だに引き継いでいるため、昭和23年の戦後間もない頃に作られた法律の営業時間規制はそのままとされているのです。

風営法改正によるクラブの営業時間延長

平成27年の風営法改正によって、特定遊興飲食店営業という新たなジャンルが生まれ、クラブ(ダンスをさせる営業)は深夜の時間帯に営業ができるようになりました。

ただし、完全に営業時間の規制がなくなったわけではありません。

法律とは別に、多くの条例で午前5時から午前6時までの間は営業を禁止しています。

それでも、改正前の風俗営業許可(旧3号営業)では午前0時までしか営業できなかったので、深夜の時間から客が入り出すクラブにとっては、歓迎する法改正となったのです。

営業時間にも規制緩和の波、深夜も営業できるようになるか?

風営法の営業時間規制緩和

風営法の営業時間の規制は、現代の生活環境の深夜化の変化から、何度となく改正(規制緩和)が行われています。

風営法が制定されたとき、風俗営業の深夜の営業は午後11時までとされていました。それが、昭和59年の改正で午前0時まで延長され、平成10年に条例で午前1時まで延長することができるようになったのです。

また、平成27年のクラブの法改正と同じくして、各都道府県における特定の地域で午前1時までとされていた風俗営業の営業時間の上限がなくなり、「午前0時以降の条例で定める時間まで」と改正されたのです。

とはいえ、その条例が改正されなければ営業時間の延長は実現されないままですが、風俗営業の営業時間問題への規制緩和を期待できる改正となりました。

しかし、条例によって午前0時以降に営業できる範囲はほぼ繁華街に定められています。
やはり全ての地域において深夜の時間帯に営業できるようになるわけではありません。

無許可営業か営業時間規制の違反か

風俗営業許可を取るべきか

風俗営業の許可を取るか、深夜酒類提供飲食店営業の届出にするか、どうすれば風営法に違反しない営業ができるのでしょう。

残念ながら、現在の法律ではキャバクラやスナック、ガールズバーが風営法に違反することなく、深夜の時間帯に営業することはできません・・・
理想をいうならば、本当は許可を取って、深夜の時間帯に営業できるようになることなんです。

風営法の許可を取るか、深夜酒類提供飲食店営業にするか

あなたがどちらにするか迷う理由は、営業できる時間の長さにありますよね。

しかしながら、本来は「接待行為」があるかどうかの基準で許可を取るか考えなければならないところが、営業できる時間の短さから、許可を取らないという判断をしなくてはならないところではないでしょうか。

でも、よく考えてみてください。
自動車を運転するのに、無免許で運転はしませんよね?
風営法の許可を取らずに接待をする営業は、無免許運転をしているのと同じことなんです。

では、スナックやガールズバーなら深夜酒類提供飲食店営業の届出をしているから大丈夫?
というと、やはり接待行為という点からみれば、原付バイクの免許は持っているけど、自動車を運転しているようなものです。やはりグレーゾーンというよりはアウトです。

接待行為って、何をしたらいけないの?いろいろ噂はあるけど、わからないことばかりよ。

そうね。接待行為は複雑で難しい解釈も必要なの。この記事を読んでしっかり理解しておいて!〔関連記事〕。警察と経営者で何かが違う?!風営法違反の接待基準を徹底検証

スピード違反と時間外営業違反

風営法の時間外営業違反

自動車の運転にも違反があるように、法定速度を超えて運転をしていればスピード違反で違反切符を切られてしまいます。しかし、余程の速度超過でなければ一発免停や免許取消ということはありません。

風営法は、風俗営業の許可を持っていれば、堂々と接待行為のある営業ができるわけですが、法律や条例に定められた営業時間の制限があります。

法律で定められた営業時間を超えて営業することを「時間外営業」といい、スピード違反のような違反に例えることができます。余程のことがなければ一発で営業停止ということはありません。

風俗営業の許可を取ると、夜の8時や9時から店を開けて、午前0時には閉店しなくてはならない・・・

それこそ取り締まりや、立ち入りに来た警察官に「そもそも、風俗営業の許可を取って、3時間でどうやって店の経営すればいいんだよ」と風俗営業の経営者ならば聞きたいたいところでしょう。

でも、取り締まりに来た警察官が悪いわけでもなく、法律に従ってお仕事をしているだけなので、ここで文句を言ったところで何も変わりません。

まさに、「風営法をなんとかしてくれ!!」が正解です。とは言っても、時代の変化とともに、時間規制の緩和が進んでいることは上に述べたとおりですが、風営法の趣旨から、全面的に深夜の営業が解禁されることはありません。

しかし、現実的には、まだまだこの営業時間の制限が、風俗営業の許可を取る足かせとなっていることは間違いないのです。このような実態にあることも、風営法が時代遅れと言われる所以でもあります。

ただ、「営業できる時間の短さを理由」に、許可を取るか、深夜酒類提供飲食店営業の届出にするか迷うことは、そもそも大きな間違いということだけ忘れないでください。

無免許運転とスピード違反、どちらも違反行為ではありますが、どちらの罪が重いかと考えると、無許可営業がいかに問題であるかは容易に想像できるできるのではないでしょうか。

営業時間制限違反をした

  • 行政量定 20日以上6か月以下の営業停止命令。基準期間は40日

無許可営業をした

  • 2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金(併科)

【関連記事】風営法違反チェックリスト![従業員の逮捕リスク]回避ガイド!!

まとめ

ここでは営業時間を理由に、風営法の許可を取るか、深夜酒類提供飲食店営業にするか迷われている経営者のために、その判断すべき基準を解説してきました。

もちろん、風営法の許可を持っていれば時間外営業してもいいというわけではありません。

無許可営業での風営法違反による「逮捕リスク」を無くしていくための判断基準のひとつであるとご理解頂ければと思います。

現在の風営法の趣旨からして、営業時間の撤廃が期待されることはありません。しかし、時代の流れによって営業時間の規制緩和は進んでいます。

幾度となく風営法は、時代の流れに即した改正が行われています。
また旧3号営業のクラブのように、業界団体の力で特定遊興飲食店営業という風営法改正を実現することもあり得るのです。