もしあなたが、飲食店オーナーで、深夜の時間帯にイベントやパーティー、ゲーム競技やカラオケ大会など、客に「遊興」をさせる営業をしているのに、「うちの店、風営法と何か関係ある?」と考えているならば、それは危険です!
それは、もしかして
風子
法子
風子
法子
この記事を読むことで、特定遊興飲食店営業がどのような営業に該当するのかがわかります。特定遊興飲食店営業となるための5つの要件をまとめました。
目 次
特定遊興飲食店営業とは?
特定遊興飲食店営業の定義
特定遊興飲食店営業とは、風営法第2条第11項で次のように定義されています。
この法律において「特定遊興飲食店営業」とは、ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客に酒類を提供して営むものに限る。)で、午前六時後翌日の午前零時前の時間においてのみ営むもの以外のもの(風俗営業に該当するものを除く。)をいう。
つまり、特定遊興飲食店営業というためには、次の5つの要件が必要です。
特定遊興飲食店営業の5つの要件
- 深夜に(午前0時から午前6時までの間)
- 遊興させる設備を設け
- お酒を提供し
- 客に遊興させる
- 継続的に営業をする(短期間のイベントではなく)
この5つの何か一つでも欠けると、特定遊興飲食店営業とはなりません。
深夜に、お酒を提供するだけならば、風営法には「深夜における酒類提供飲食店営業」というものがありますが、ここに遊興が入ると、「特定遊興飲食店営業」になるのです。風営法は、「遊興」を提供する飲食店営業について規制をし、許可の制度を設けています。
平成27年の風営法改正により、ダンスが風俗営業から外れ、特定遊興飲食店営業ができました。クラブでのダンスが違法であるかの裁判がきっかけとなった改正でもあり、特定遊興飲食店営業はクラブやライブハウスだけのためにあると考えている飲食店オーナーも多いことでしょう。また、特定遊興飲食店営業の無許可営業の取り締まりも、おもにクラブ営業に向けられていますが、風営法はダンスだけではなく、「遊興をさせる営業」を幅広く規制しています。
特定遊興飲食店営業の5つの要件を解説
特定遊興飲食店営業には5つの要件があることはわかりました。それぞれの要件の考え方を整理しておきましよう。
特定遊興飲食店営業の「深夜」の具体例
深夜とは、午前0時から午前6時までの時間をいいます。
午前6時から、翌日の午前0時までのみ営業する場合には、特定遊興飲食店営業には該当しません。
特定遊興飲食店営業の「設備を設けて」の具体例
「設備を設けて」とは、客に遊興と飲食をさせる営業を営むに足りると客観的に認められる物的施設及び備品を設けていることを指します。
- 客に遊興をさせる設備がなく、飲食をさせる設備のみがある客室甲室を設けている飲食店営業
- 客に飲食をさせる設備がなく、遊興をさせる設備のみがある客室乙室を設けている興行場営業
が同一の施設内で営まれている場合で、次のいずれかに該当するようなときは、これらの営業は一体のものと解され、「設備を設けて」客に遊興と飲食をさせていることになります。
1)甲室と乙室の料金を一括して営業者に支払うこととされている場合(食券付きの入場券を販売する 場合や,入場料を支払えば飲食物の一部又は全部が無料になる場合等を含む。)
2)客が甲室で飲食料金の精算をせずに乙室に移動できる場合
3)客が乙室で遊興料金の精算をせずに甲室に移動できる場合
4)乙室にテーブルがあり、客が甲室で提供を受けた飲食物を乙室に持ち込める場合
5)乙室にテーブルがあり、乙室にいる客に対して、甲室から飲食物を運搬して提供する場合
6)甲室にいる客が乙室でのショー、音楽等を鑑賞できる場合
上記4)に該当する場合であっても、映画館、寄席、歌舞伎やクラシック音楽のための劇場等のように、専ら、興行を鑑賞させる目的で客から入場料を徴収することにより営まれる興行場営業であって、 興行の鑑賞のための席において客の大半に常態として飲食をさせることを想定していないものについては、当該席が設けられている客室は飲食店営業の営業所とはされていないことが一般的で、その場合に客が席に飲食物を持ち込んで飲食をしたとしても、その席は、一般には飲食をさせる設備には当たらない( なお、単に映画を見せる行為は、「遊興をさせること」にも当たらない。)。
特定遊興飲食店営業の「酒類を提供して」の具体例
深夜に、客に遊興をさせる飲食店であっても、客に酒類を提供しないものについては、特定遊興飲食店営業の許可の対象外となります。
「酒類を提供する」とは、酒類を飲用に適する状態に置くことをいい、営業者がこれを客に販売したり、贈与したりする場合に限らず、客が持参し、又はボトルキープの対象となっている酒類につき、燗をしたり、グラス等の器具、氷、水割り用の水等を提供したりする行為は、「酒類を提供する」に当たります。
特定遊興飲食店営業の「客に遊興させて」の具体例
客に遊興をさせるサービスは、つぎの2つのサービスがあります。
- 鑑賞型サービス(客にショーを見せたり、演奏を聞かせたりする)
- 参加型サービス(客に遊戯や、ゲーム等を行わせる)
これらのサービスを、営業者側の積極的な行為によって客に遊び興じさせることが必要です。
では、どのような場合に営業者側に積極的な行為があったと言えるのでしょうか
鑑賞型のサービスについて
ショー等を鑑賞するよう客に勧める行為、実演者が客の反応に対応し得る状態で演奏・演技を行う行為等は、積極的な行為に当たります。一方、単にテレビの映像や録音された音楽を流すような場合は、積極的な行為には当たりません。
参加型のサービスについて
遊戯等を行うよう客に勧める行為、遊戯等を盛り上げるための言動や演出を行う行為等は積極的な行為に当たります。一方、客が自ら遊戯を希望した場合に限ってこれを行わせるとともに、客の遊戯に対して営業者側が何らの反応も行わないような場合は、積極的な行為には当たりません。
- 具体的に遊興をさせる行為
- 不特定の客にショー、ダンス、演芸その他の興行等を見せる行為
- 不特定の客に歌手がその場で歌う歌、バンドの生演奏等を聴かせる行為
- 客にダンスをさせる場所を設けるとともに、音楽や照明の演出等を行い、不特定の客にダンスをさせる行為
- のど自慢大会等の遊戯、ゲーム、競技等に不特定の客を参加させる行為
- カラオケ装置を設けるとともに、不特定の客に歌うことを勧奨し、不特定の客の歌に合わせて照明の演出、合いの手等を行い、又は不特定の客の歌を褒めはやす行為
- バー等でスポーツ等の映像を不特定の客に見せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる行為
- 具体的に遊興をさせるに当たらない行為
- いわゆるカラオケボックスで不特定の客にカラオケ装置を使用させる行為
- カラオケ装置を設けるとともに、不特定の客が自分から歌うことを要望した場合に、マイクや歌詞カー ドを手渡し、又はカラオケ装置を作動させる行為
- いわゆるガールズバー、メイドカフェ等で、客にショーを見せたりゲーム大会に客を参加させたりせず に、単に飲食物の提供のみを行う行為
- ボーリングやビリヤードの設備を設けてこれを不特定の客に自由に使用させる行為
- バー等でスポーツ等の映像を単に不特定の客に見せる行為(客自身が応援等を行う場合を含む。)
特定遊興飲食店営業の「営業」の具体例
「営業」とは、財産上の利益を得る目的をもって、同種の行為を反復継続して行うことをいいます。
営業としての継続性及び営利性がない場合は、深夜において人に遊興と飲食をさせたとしても、 特定遊興飲食店営業には該当しません。
- 営業に該当しない具体例
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- 日本に所在する外国の大使館が主催する社交パーティー
- 結婚式の二次会として、新郎・新婦の友人が飲食店営業の営業所を借りて主催する祝賀パーティー
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飲食店営業の営業者が当該パーティーの主催者に対して営業所を有償で貸す行為には営利性が認められる。
営業者が、深夜に及ぶパーティーのために営業所を有償で貸し、深夜において、酒類を提供するとともに、パーティーの余興に合わせて照明や音響の調整を行うという行為を反復継続しようとする場合は、主催者は特定遊興飲食店営業の許可を受ける必要はないが、当該営業者は当該許可を受ける必要がある。
場所貸しを行う飲食店が、イベントやパーティーを有償で反復継続しようとする場合には特定遊興飲食店営業の許可が必要です。
- 継続性に該当しない具体例
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- 例えば、スポーツ等の映像を不特定の客に見せる深夜酒類提供飲食店営業のバー等において、平素は客に遊興をさせていないものの、特に人々の関心の高い試合等が行われるときに、反復継続の意思を持たずにたまさか短時間に限って深夜に客に遊興をさせたような場合は、特定遊興飲食店営業としての継続性は認められない。
- 短期間の催しについては、2晩以上にわたって行われるものは、継続性が認められる。これに対し、繰り返し開催される催し(1回につき1晩のみ開催されるものに限る。)については,引き続き6月以上開催されない場合は、継続性が認められず、営業には当たらない。
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また、年末のカウントダウンパーティーなどのような、1年に1回、また半年に1回のイベントを主催する飲食店やホテルの宴会場、イベントスペースは営業にはあたらないと考えられます。
特定遊興飲食店営業の遊興と、風俗営業の遊興の違い
キャバクラのような接待の行われる飲食店でも、遊戯やゲーム、カラオケやショーなどの遊興がされることがあります。また、ゲームバー(アミューズメントカジノなど)のようなゲームや遊技機を設置してゲームや遊技をさせる飲食店もあります。ここでは、風俗営業の遊興と、特定遊興飲食店営業の遊興との違いを解説します。
キャバクラの遊興との違い
ポイントは接待に当たらない範囲で客に遊興させる必要があります。
風俗営業の接待にも客にショー等を見せる場合がありますが、特定遊興飲食店営業での遊興のショーと何が違うのかを見ていきましょう。
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- 風俗営業では、「特定少数の客に対して、専らその客の用に供している客室又は客室内の区画された場所において、ショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為」が接待になります。
- 「ホテルのディナーショーのように不特定多数の客に対し、同時に、ショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為」は、接待とはなりません。
- 特定遊興飲食店営業の遊興は「不特定の客にショー、ダンス、演芸その他の興行等を見せる行為」が遊興をさせたとなります。
風子
法子
「不特定の客に〜」と言えるためには、来店する客の誰もがそのサービスを受けることができるようにすることを言います。来店する客のうちの一部を特定して、その特定された客のためだけにそのサービスを提供する場合は「接待行為」に該当する可能性があるから注意が必要よ。
ゲームバーの遊興との違い
特定遊興飲食店営業でもゲームや競技に参加させることはできますが、ポイントは風俗営業で規制しているゲームや遊戯に該当しないことです。
風俗営業では、
「スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)」
を規制し、これらに該当する場合には風俗営業となります。
また、「特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為」は接待行為にも該当します。
飲食店であっても、これらの接待や遊興、ゲームセンターの規制に該当すると風俗営業の無許可営業となり、取り締まりの対象となります。
無許可営業をした
- 2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金(併科)
まとめ
他店との差別化のため、客に遊興をさせることをコンセプトにした飲食店。
風営法では、深夜に、お酒を提供して、客に遊興させる飲食店を特定遊興飲食店営業として規制しています。また、風俗営業の規制も接待や遊興、遊技と複雑に絡み合っています。
あなたの店で提供するサービスが風営法違反とならないためにも、この記事で特定遊興飲食店営業の要件を整理しておきましょう。