2025年の風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)改正により、新たに新設された「第18条の3(客の正常な判断を著しく阻害する行為の規制)」。
この条文は、ホストクラブやキャバクラ、コンカフェなどにおける、いわゆる「本営(恋愛感情を利用した過度な営業)」や「不当な売掛金(ツケ払い)の請求」を直接的に規制する非常に重要なルールです。
「うちの店の営業スタイルは違法にならないか?」「キャストの接客が原因で営業停止になるのでは?」と不安に感じている経営者・店長の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、風俗営業のコンプライアンス実務に精通する視点から、第18条の3で具体的に何が禁止されたのか、違反した際のリスク、そして店舗側が今すぐ取るべき対策について分かりやすく徹底解説します。
改正風営法「第18条の3(客の正常な判断を著しく阻害する行為の規制)」とは?
風営法第18条の3は、店舗の経営者および従業員に対し、お客様が冷静な判断を失うような悪質な営業行為を禁止する規定です。
なぜ新設されたのか?(法改正の背景)
この条文が新設された最大の背景は、一部の悪質なホストクラブ等による「高額な売掛金(ツケ)問題」の社会問題化です。
お客様に返済能力以上の飲食をさせ、多額の売掛金を背負わせた上で、その返済のために性風俗店での勤務や路上売春を強要する事件が相次ぎました。このような悪質な搾取構造を根本から断ち切るため、トラブルの入り口となる「不当な勧誘や接客行為そのもの」を規制すべく法改正が行われました。
いつから施行されている?対象となる営業形態は?
本規定は2025年の法改正によって施行されています。
対象となるのは、風営法第2条第1項第1号に規定される「接待飲食等営業」です。主に以下の業態が該当します。
- ホストクラブ
- キャバクラ・クラブ
- ガールズバー(接待を伴う許可を取得している場合)
- コンセプトカフェ(同上)
【重要】第18条の3で禁止される3つの具体例(何がアウトなのか?)
では、具体的にどのような行為が「客の正常な判断を著しく阻害する行為」に該当するのでしょうか。大きく分けて以下の3つのパターンが禁止されています。
① 料金に関する虚偽・誤認させる説明
お客様に対して、料金システムや提供する飲食物の価格について、嘘をついたり誤解させたりして注文を取る行為です。
- 「本当はボトル50万円だけど、君だけ特別に10万円にしてあげる」と嘘の通常価格を提示する。
- メニュー表にはない不透明な「サービス料」や「指名料」を事前の説明なしに上乗せして請求する。
② 恋愛感情を利用し、客を困惑させる営業(いわゆる「本営」の規制)
業界内で最も注意すべきなのが、この規定です。いわゆる「本営(色恋営業)」が行き過ぎた場合、違法とみなされます。具体的には、以下の3つの要件をすべて満たす行為がアウトになります。
- 客がキャストに恋愛感情(好意)を抱いている
- 「キャストも自分に好意がある(付き合える等)」と客が誤って信じている
- キャストがその誤信を知りながら利用し、困惑させて高額な飲食をさせる
- 「今月ナンバー入りできないと店をクビになる。助けてくれないならもう会えない」と、関係破綻や不利益をチラつかせて高額なシャンパンを入れさせる。
- 交際を匂わせながら、明確に拒絶できない心理状態に追い込んで高額な売掛を組ませる。
③ 注文前の飲食物の提供(勝手な早開け等の禁止)
お客様が明確に注文を確定していない、あるいは承諾していない段階で、勝手に高額なボトルを開栓するなどの行為です。
- お客様が「考え中」と言っているのに、勝手にシャンパンを開けて「もう開けちゃったから払ってね」と既成事実を作って支払いを迫る。
店舗経営者が今すぐ行うべき4つの対策
法改正に対応し、安全かつクリーンな店舗運営を継続するためには、以下の4つの対策を速やかに講じる必要があります。
① 料金システムとメニューの透明化
口頭だけの曖昧な説明を止め、誰が見ても分かる明朗な料金表(Tax、サービス料などの記載を含む)を作成し、入店時や注文時に必ず提示するオペレーションを徹底してください。
② 売掛金(ツケ払い)ルールの厳格化・廃止
トラブルの温床である売掛金自体を廃止(完全キャッシュレス・前払い制への移行)するのが最も安全です。継続する場合でも、「初回・新規客の売掛禁止」「客の収入・身分証明書に基づく厳格な上限設定」「自社内での与信審査ルールの策定」などを徹底しましょう。
③ 従業員(キャスト・内勤)への教育とマニュアル改訂
キャストに対し「第18条の3」の内容を周知し、恋愛感情を不当に利用して困惑させるような営業(悪質な本営)を店舗として禁止する旨をマニュアルに明記してください。内勤スタッフには、キャストと客の間にトラブルの火種がないか、定期的にヒアリングさせる体制が必要です。
④ 広告宣伝の見直し(NGワードに注意)
警察庁の通達により、過度に射幸心や歓楽的雰囲気を煽る広告表現が厳しくチェックされています。「年間売上〇億円突破」「溺れろ」「破滅するまで」といった、客の正常な判断を失わせるようなキャッチコピーはSNSや看板から直ちに削除・修正してください。
まとめ:風営法改正に合わせたクリーンな店舗運営を
風営法第18条の3の導入は、「一夜の過度な売上(搾取)」から「お客様との信頼関係に基づく継続的な店舗経営」への転換を業界全体に求めています。
行政処分や警察の立ち入りによるブランドイメージの低下、最悪のケースである「許可取消し」を防ぐためには、経営層がいち早く法律を理解し、現場のルールをアップデートすることが不可欠です。
当サイト「風営ジャーナル」では、風俗営業許可の運用や最新の法改正対応に関する実践的な情報を発信しています。自店舗のコンプライアンスチェックや、営業許可に関するご不安があれば、専門の行政書士や弁護士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。

