風俗営業(キャバクラ、ホストクラブ、パチンコ店、アミューズメントカジノなど)を開業・運営するにあたり、「風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)」の理解は不可欠です。しかし、法律だけを読んで安心するのは大変危険です。
なぜなら、風営法には第21条に「条例への委任」という非常に重要な規定が存在するからです。本記事では、風営法第21条の意味や、都道府県ごとの条例によって営業可能な時間、立ち入り制限などがどのように変わるのかについて、具体例を交えてわかりやすく解説します。
風営法第21条「条例への委任」とは?条文の意味をわかりやすく解説
風俗営業のルールは、全国一律ではありません。それを定めているのが風営法第21条です。
そして、風俗営業許可申請にもご当地ならではのローカルルールがあります。
条文の要約(なぜ条例でルールを決めるのか?)
風営法第21条では、おおまかに言うと「各都道府県は、風俗営業に関して善良の風俗や清浄な風俗環境を保持するため、独自の『条例』で必要な制限を追加してよい」と定められています。
つまり、国が定めた大元の法律(風営法)という土台の上に、各都道府県の実情に合わせた独自のルール(条例)を上乗せすることが法的に認められているのです。これを「条例への委任」と呼びます。
地域によって風営法のルールが異なる理由
では、なぜ全国一律のルールにしないのでしょうか。それは、都道府県によって繁華街の規模、治安の状況、住民の生活環境が全く異なるからです。
例えば、深夜まで多くの人が行き交う大都市の巨大歓楽街と、閑静な住宅街が広がる地方都市とでは、求められる規制の強さが違います。そのため、各自治体が実情に合わせて柔軟に規制を行えるよう、都道府県の条例にルールの策定を委ねているのです。
第21条に基づき「各都道府県の条例」で定められる主な制限
各都道府県の「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(風営法施行条例)」などによって、主に以下のような事項に独自の制限が設けられています。
営業時間の制限(深夜営業の可否など)
風俗営業は、風営法によって原則として「午前0時から午前6時まで」の深夜営業が禁止されています。しかし、条例によって地域ごとの違いが設けられています。
独自ルール(客引き禁止・料金表示など)
善良の風俗を害する行為を防止するため、遵守事項が自治体ごとに細かく設定されています。
各都道府県条例の具体例
北海道条例
2 法第13条第1項第1号の特別な事情のある日として条例で定める日は地域の祭典等の日であって北海道公安委員会が指定する日(以下「指定日」という。)とし、同号の当該事情のある地域として条例で定める地域は当該地域の祭典等が行われる地域として北海道公安委員会が指定する地域(以下「祭典地域」という。)及びその他の地域であって次項の規定により指定された地域とする。
3 法第13条第1項第2号の午前0時以後において風俗営業を営むことが許容される特別な事情のある地域として条例で定める地域は、接待飲食等営業及びまあじゃん屋について都市計画法第2章の規定により定められた商業地域のうちで大規模な繁華街を形成している地域であって、良好な風俗環境を保全するために支障がないと認めて北海道公安委員会が指定する地域とする。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(昭和30年北海道条例第77号)第4条第1項の規定により、良好な風俗環境を保全するために支障がないと認める地域を次のとおり指定した。
1 札幌市西区琴似2条2丁目6番25号琴似あやめ保育園の敷地の周囲100メートルの区域内の地域のうち、札幌市西区琴似1条の1丁目から3丁目の地域並びに札幌市西区琴似2条1丁目6番、7番1、7番2、8番、9番、15番、16番、17番、23番及び24番2の地域
2 札幌市南区定山渓温泉西1丁目及び西2丁目のうち札幌市南区定山渓温泉西1丁目31番地札幌市立定山渓中学校の敷地の周囲100メートルを超える区域の地域並びに札幌市南区定山渓温泉東4丁目308番地札幌市立定山渓小学校の敷地の周囲50メートル以上100メートルの区域内の地域のうち都市計画法(昭和43年法律第100号)第2章の規定により定められた商業地域内の地域並びに札幌市南区定山渓温泉東3丁目256番地社会福祉法人光華園定山渓保育所の敷地の周囲30メートル以上100メートルの区域内の地域
3 小樽市朝里川温泉2丁目670番地1から670番21まで、673番1から673番73まで、674番、675番2及び675番3、676番1から676番13まで、677番7から677番18まで、681番1から681番24まで、682番2から682番9まで、685番6、685番15及び685番16、686番1から686番71まで、687番1から687番20まで、688番1及び688番2、689番1及び689番2、690番及び691番、692番1から692番115まで、693番2から693番9まで、694番2から694番69まで、695番1から695番15まで、726番、727番1、728番1、731番から733番まで、743番1から743番4まで、744番1及び744番2、745番から748番まで、753番1及び753番3、754番1から754番18まで、755番、758番並びに759番のうち都市計画法第2章の規定により定められた第1種住居地域内の地域
4 虻田郡洞爺湖町洞爺湖温泉町のうち小有珠川以東の都市計画法第2章の規定により定められた第2種住居地域内の地域
5 函館市本町9番23号杉の子保育園の敷地の周囲100メートルの区域内の地域のうち、道道五稜郭公園線以東の地域
第4条の2
(1) 指定日の初日の前日 午後11時から翌日の午前0時前の時間
(2) 指定日(最終日を除く。) 午前0時から午前1時まで及び午後11時から翌日の午前0時前の時間
(3) 指定日の最終日 午前0時から午前1時までの時間
2 法第2条第1項第5号の営業を営む風俗営業者は、午前0時から午前1時までの時間(祭典地域における指定日に関し午前0時から午前1時までの時間を除く。)においてその営業を営んではならない。
宮城県条例
第4条
(1) 8月14日から同月17日までの日 県内全域
(2) 12月25日から翌年1月1日までの日 県内全域
(3) 前2号に掲げるもののほか、公安委員会規則で定める日 公安委員会規則で定める地域及びその他の地域であって次条に規定する地域
2 前項各号に掲げる日及び地域における法第13条第1項の条例で定める時は、午前1時とする。
第5条
2 前項の地域における法第13条第1項の条例で定める時は、午前1時とする。
条例(風営法第21条関連)に違反した場合の罰則とリスク
「国の法律(風営法)は守っているから、条例は少しぐらい破っても大丈夫だろう」という認識は極めて危険です。条例違反に対しても、重い処分が下されます。
行政処分(指示処分・営業停止・許可取消し)
条例で定められた営業時間や遵守事項に違反した場合、管轄の公安委員会から以下のような行政処分を受けるリスクがあります。
- 指示処分: 違反行為を是正するよう求められる警告。
- 営業停止命令: 一定期間(数日〜最長6ヶ月)の営業停止。店舗の経営にとって致命的なダメージとなります。
- 許可の取消し: 最も重い処分。風俗営業の許可そのものが取り消され、営業ができなくなります。
罰金や刑事罰の可能性
悪質な時間外営業や、未成年の立ち入り、悪質な客引きなどを行った場合、行政処分だけでなく刑事罰(罰金や懲役)の対象となる可能性もあります。刑事罰を受けると、以後の許可申請において欠格事由に該当してしまい、二度と風俗営業を営めなくなるリスクもあります。
まとめ:風俗営業の開業は管轄地域の「条例」確認が必須
風俗営業を始める際、風営法という「国のルール」を理解することは当然の第一歩ですが、第21条の「条例への委任」がある以上、「店舗を構える都道府県・市区町村のルール(条例)」を完全に把握していなければ、適法な営業はできません。
トラブルを防ぐなら行政書士など専門家へ相談を
「自分の出店予定地が営業延長の特例地域に入っているか?」「図面の要件だけでなく、条例の遵守事項を満たしているか?」といった調査は、非常に専門的で手間がかかります。
許可申請の準備段階で少しでも不安がある場合は、管轄の警察署(生活安全課)へ事前相談に行くか、風営法や地域の条例に精通した地元の行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。確実な法令遵守で、安全かつ安定した店舗経営を目指しましょう。

