【風営法第7条】風俗営業の相続手続きとは?死亡後60日以内の承認申請と注意点

「スナックを経営していた親が急逝した。お店はどうなるの?」
「名義変更はできないと聞いたけれど、廃業するしかないのか……」

身内が亡くなり深い悲しみのなか、急いで店舗の今後について調べられていることかと思います。
結論から申し上げますと、個人事業主として風俗営業を行っていた方が亡くなった場合、「風俗営業の相続承認申請(風営法第7条)」を行うことで、ご遺族が適法にお店を引き継ぐことが可能です。

ただし、この手続きには「死亡後60日以内」という非常に短いタイムリミットが設けられています。本記事では、風営法第7条に基づく相続手続きの流れ、必要書類、そして絶対に知っておくべき注意点を分かりやすく解説します。

風営法第7条とは?「風俗営業の相続」に関する規定

風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)第7条は、個人で風俗営業の許可を受けていた人(被相続人)が死亡した際、その相続人が許可を引き継ぐための特例ルールを定めた条文です。

原則「名義変更」は不可だが相続は例外

大前提として、風俗営業の許可は「特定の人物」と「特定の場所」に対して与えられるものです。そのため、生前に第三者や親族へ単に許可を譲渡する(名義変更する)ことは法律上認められていません。

しかし、経営者が死亡した場合にまで一律で許可を消滅させてしまうと、残された家族の生活や従業員の雇用が奪われてしまいます。そこで、「死亡による相続」に限り、例外的に許可の引き継ぎが認められているのです。

【超重要】申請期限は「死亡後60日以内」

風俗営業の相続において、最も注意しなければならないのが「期限」です。経営者が死亡した日から起算して「60日以内」に、管轄の警察署(公安委員会)へ承認申請を行う必要があります。

期限を1日でも過ぎると許可は「失効」する

もし60日の期限を1日でも過ぎてしまった場合、現在の風俗営業許可は完全に失効します。
失効後に営業を続けるためには、新規で許可を取り直さなければなりません。しかし、法改正による規制強化などで「現在は新規許可が下りない場所(保護対象施設の近辺など)」であった場合、二度とその場所で営業できなくなるという取り返しのつかない事態に陥ります。

申請中(承認が下りるまで)の営業はどうなる?

申請から承認が下りるまでの間、お店は閉めないといけないの?」と不安に思うかもしれませんが、ご安心ください。

60日以内にしっかりと相続承認申請を行えば、承認が下りるまでの期間、申請者は亡くなった方と同じ範囲で風俗営業を行うことができる「みなし許可」の扱いとなります。つまり、適法に営業を継続しながら結果を待つことが可能です。

風営法第7条の相続承認申請が認められないケース

期限内に申請すれば誰でも無条件でお店を継げるわけではありません。以下のケースでは承認が下りないため注意が必要です。

1. 相続人が「欠格事由」に該当する場合

お店を継ぐ人(承継者)自身が、風営法第4条に定められている「欠格事由」に該当する場合は、相続が認められません。主な欠格事由は以下の通りです。

  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 1年以上の懲役または禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
  • 集団的に、または常習的に暴力的不法行為を行うおそれのある者(暴力団関係者など)
  • アルコール、麻薬、大麻などの依存症である者

2. 相続人が複数いる場合は「1人」を決める必要あり

風俗営業の許可を「兄弟3人の共有名義にする」といったことはできません。
配偶者や子供など、法定相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を通じて「誰がお店(許可)を継ぐか」を1人に絞る必要があります。そして、お店を継がない他のすべての相続人から「相続同意書」をもらわなければなりません。

相続承認申請の手続きの流れと必要書類

実際に相続承認申請を行うためのステップと、用意すべき書類を確認しましょう。

手順1
相続の発生(経営者の死亡)
この日から60日以内にすべてを完了させます。
手順2
承継者の決定(遺産分割協議)
誰がお店を引き継ぐかを相続人全員で話し合います。
手順3
必要書類の収集・作成
役所で戸籍等を取得し、警察署指定の書類を作成します。
手順4
警察署へ申請
店舗の所在地を管轄する警察署の生活安全課へ書類を提出します。
手順5
承認・許可証の交付
審査に通過すると、新たな名義での許可証が交付されます。

主な必要書類一覧

警察署へ提出する主な書類は以下の通りです。(※警察署によって細かな指定が異なる場合があります)

  • 相続承認申請書
  • 亡くなった方(被相続人)の戸籍謄本または除籍謄本(死亡の事実と全相続人が分かるもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の同意書
  • お店を継ぐ人の住民票(本籍地記載のもの)
  • お店を継ぐ人の身分証明書(本籍地の市区町村が発行するもの)
  • お店を継ぐ人の誓約書

法人の場合は第7条ではなく「役員変更」または「合併・分割」

ここまで解説したのは「個人事業主」としてお店を経営していた場合のルールです。
もし、亡くなった親が「株式会社」や「合同会社」などの法人として許可を取得し、経営していた場合、風営法第7条の相続対象にはなりません。

法人の場合は、会社そのものが許可を持っている状態です。したがって、代表取締役が亡くなった場合は、新たに代表者を立てて「役員変更届」を提出することになります(または法人の合併・分割を伴う場合は第7条の2、第7条の3の手続きとなります)。
自店舗の許可が個人名義か法人名義か、まずは許可証を確認してみましょう。

まとめ:風俗営業の相続手続きは時間との勝負!早めに専門家へ相談を

風営法第7条に基づく相続手続きで最も厄介なのは「死亡後60日」という厳格な期限です。

お葬式や初七日、四十九日の法要などで慌ただしいなか、親族間で誰がお店を継ぐか話し合い、本籍地から複数の戸籍謄本を取り寄せ、警察署とのやり取りを行うのは、想像以上の労力と精神的負担がかかります。

「期限に間に合わず許可が失効してしまった……」という最悪の事態を防ぐためにも、風俗営業許可に強い行政書士などの専門家へ早めに相談し、手続きの代行を依頼することを強くお勧めします。