【行政書士監修】風営法第10条「許可証の返納」とは?期限や罰則を解説

キャバクラ、ホストクラブ、パチンコ店などの風俗営業を営むにあたり、避けて通れないのが法律の知識です。中でも、店舗を閉める際や経営者に万が一のことがあった際に重要となるのが「風営法第10条」です。

この記事では、風営法第10条で定められている「許可証の返納義務」について、対象となるケース、手続きの期限、違反時の罰則までを詳しく解説します。

風営法(風適法)第10条とは?「風俗営業許可証の返納」を定めた法律

風営法(正式名称:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の第10条は、「風俗営業許可証の返納」について定めた条文です。

許可を受けた営業所が何らかの理由で営業を終了した場合、所持している許可証を速やかに警察(公安委員会)へ返さなければならないというルールです。
(出典:e-Gov法令検索「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」

なぜ許可証の返納が必要なのか?

許可証の返納が義務付けられている最大の理由は、無許可営業や名義貸しなどの不正利用を防ぐためです。

営業実態がないにもかかわらず許可証だけが残っていると、その許可証を使って別人が違法に営業を行うリスクがあります。警察が管轄エリアの営業実態を正確に把握し、治安を維持するために不可欠な手続きとなっています。

返納手続きの期限は

許可証の返納には厳密な期限が設けられていません。「遅滞なく」とは、実務上は数日から1〜2週間程度を目安とすることが多いです。
店舗の片付けや関係者への連絡で慌ただしい時期ですが、期限が非常に短いため後回しにしないよう注意が必要です。

返納しなかった場合の罰則

  • 罰則:風営法第56条4号の規定により、「30万円以下の罰金」に処される可能性があります。単なる事務手続きの漏れと軽く考えず、必ず期限内に済ませましょう。
  • 行政処分:指示処分を行う。

【ケース別】許可証を返納すべき5つの条件と手続きを行う人

許可証を返納しなければならない具体的なケースは、法律で主に6つ定められています。事由によって「誰が返納手続きを行うか(返納義務者)」が異なるため注意が必要です。

返納の事由(条件) 手続きを行う人(返納義務者)
① 風俗営業を廃止(廃業)したとき 許可証の交付を受けた者(経営者本人)
② 風俗営業許可が取り消されたとき 許可証の交付を受けた者(経営者本人)
③ 紛失した許可証を発見・回復したとき 許可証の交付を受けた者(経営者本人)
④ 個人事業主(許可取得者)が死亡したとき 同居の親族、または法定代理人
⑤法人が解散により消滅したとき 清算人、破産管財人
⑥法人が合併により消滅したとき 合併後存続する法人の代表者
注意
死亡時の返納義務者について
個人事業主が亡くなった場合、相続人が返納義務を負うのは「相続人」ではなく「同居の親族」または「法定代理人」とされています。相続人が承継の申請をした場合には、許可の効力は維持されます。

許可証の返納に必要な書類と提出先

返納の手続き自体は、必要な書類を揃えて窓口に提出するだけのシンプルなものです。

提出先は「営業所の所在地を管轄する警察署」

提出先は、営業所(店舗)の所在地を管轄している警察署です。基本的には、生活安全課が窓口となります。受付時間は平日の日中のみとなるため、事前に電話等で窓口の対応時間を核認しておくとスムーズです。

必要書類リスト

返納手続きに必要な書類は以下の通りです。

  • 風俗営業許可証(原本)
  • 返納理由書(別記様式第12号)
返納理由書は、各都道府県警察のホームページからダウンロード可能です。万が一、許可証を紛失して返納できない場合は「理由書」の提出を求められることがあります。

【要注意】廃業・休業・名義変更にまつわる落とし穴

店舗の経営を退く際、手続きの解釈を間違えるとトラブルに発展するケースがあります。

「名義変更」は不可!店舗譲渡時は新規許可と返納が必要

風営法における最大の落とし穴とも言えるのが、風俗営業許可に「名義変更」という制度が存在しない点です。

店舗を別のオーナーに譲渡してそのまま営業を続けてもらう場合でも、旧オーナーから新オーナーへ許可を直接引き継ぐことはできません。旧オーナーが第10条に基づいて「許可証の返納(廃業)」を行い、新オーナーが「新規の許可申請」を行う必要があります。

一時的な休業のつもりが「許可取消し」になるケース

「今は客足が鈍いから数ヶ月休業しよう」という場合も注意が必要です。風営法では、正当な理由なく6ヶ月以上営業を行わない場合は許可取消しの対象となります。許可が取り消されれば、当然ながら第10条の規定により許可証を返納しなければなりません。

まとめ:風営法第10条の手続きに迷ったら専門家に相談を

風営法第10条に基づく許可証の返納は、事由発生から「遅滞なく」行う必要があります。

特に、経営者の死亡や法人の解散といったケースでは、誰が手続きを行うべきか迷ったり、他の書類整理に追われて期限を過ぎてしまったりするリスクが高まります。

返納をせずに放置すると罰金等の罰則対象となるため、手続きに不安がある場合や時間的な余裕がない場合は、風俗営業の手続きに精通した行政書士へ早めに相談することをおすすめします。