繁華街での「キャッチ(客引き)」は、飲食店やナイトレジャー店における昔からの集客手法の一つでした。しかし現在、客引き行為は「風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)第22条」によって厳しく禁止されています。
「どこからが違法な客引きになるのか?」「ビラ配りなら問題ないのか?」
このように、客引きと合法な宣伝活動の境界線について疑問を持つ経営者・店長様は少なくありません。
本記事では、風営法第22条で禁止されている「客引き行為」「つきまとい行為」の具体的な基準、合法とされる行為との違い、そして違反した場合の重い罰則(逮捕や営業停止)について分かりやすく解説します。
風営法第22条とは?「客引き(キャッチ)」を禁止する法律
風営法第22条は、風俗営業を営む者(キャバクラ、ホストクラブ、パチンコ店など)やその従業員に対して、客引き行為を明確に禁止する条文です。
風営法第22条の条文と概要
実際の風営法第22条では、以下のように定められています。
一 当該営業に関し客引きをすること。
二 当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
要約すると、「お店の宣伝のために客引きをすること」と「客引きのために道端で待ち伏せしたり、しつこくついて回ったりすること」を禁止しています。これは経営者本人だけでなく、雇われているキャストやボーイ、外部に委託したスカウトマンの行為であっても適用されます。
なぜ客引き行為は禁止されているのか?
客引きが禁止されている最大の理由は、「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、通行人の平穏な通行を妨げないため」です。
強引な客引きは、通行人に不快感や恐怖感を与え、トラブルの温床となります。また、客引きに伴う「ぼったくり被害」も後を絶たないため、警察や各自治体は客引き行為の取り締まりを年々強化しています。
どこからが違法?風営法22条で禁止される具体的な行為
では、具体的にどのような行動をとると「風営法22条違反」とみなされるのでしょうか。禁止されている主な行為は以下の2つです。
1. 客引き行為(特定の相手への積極的な勧誘)
風営法における「客引き」とは、「特定の通行人を絞り込み、積極的に声をかけて入店を促す行為」を指します。
- 通行人の前に立ちふさがり、進路を妨害する
- 「お兄さん、キャバクラどうですか?」と特定の相手に直接声をかける
- 相手の服の袖を引いたり、身体に触れたりして足止めする
- 料金を提示して「安くしますよ」と執拗に勧誘する
2. 客引き目的の「つきまとい・待ち伏せ」
実際に声をかけていなくても、客引きを目的とした「つきまとい」や「待ち伏せ」も禁止されています(同条第2号)。
- ターゲットの斜め前や後ろを歩きながら、しつこくついて行く
- 駅の出口や繁華街の路上など、公共の場所で客引き目的で立って待ち伏せする
- 相手が断っているにもかかわらず、数十メートルにわたって同行する
3. 「風俗営業」以外の店舗(ガールズバー等)でも適用される?
風営法22条は「風俗営業」に対する規制ですが、風営法の許可を受けていない「深夜酒類提供飲食店(ガールズバーや一部のコンカフェなど)」や一般の居酒屋であれば客引きをして良いわけではありません。
これらの店舗であっても、各都道府県が定める「迷惑防止条例」や、市区町村の「客引き防止条例」によって、執拗な客引きは同様に禁止されており、摘発の対象となります。
【要注意】「ビラ配り」や「看板持ち」は合法?違法?
「客引きがダメなら、無言でビラを配るだけならどうなのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。ここでは合法な宣伝と違法な客引きの境界線を解説します。
単なる「ビラ配り」や「ティッシュ配り」は合法(条件あり)
不特定多数の通行人に対して、単にチラシや割引券付きのポケットティッシュを配る行為自体は、風営法上の「客引き」には該当せず、基本的には適法です。
※ただし、公道で継続して配布活動を行う場合は、所轄の警察署で「道路使用許可」を取得する必要があります。許可なく行うと道路交通法違反となる恐れがあるため注意が必要です。
単なる「看板・プラカードの保持」も合法
お店の看板やプラカードを持って路上に立っているだけの行為も、特定の相手を勧誘していないため、客引きには当たりません。
合法な行為が「違法な客引き」に変わる瞬間
最も注意すべきは、合法なはずの「ビラ配り」や「看板持ち」が、現場のスタッフの行動次第で容易に「違法な客引き」に変わってしまうことです。
ビラを渡す際に、特定の通行人に向かって「お兄さん、今なら安く飲めますよ」と声をかけながら数歩ついていく。
ビラや看板はあくまで「ツール」であり、それを用いて特定の相手を積極的に誘引した時点で、警察からは「客引き行為(風営法22条違反)」とみなされる可能性が極めて高くなります。
風営法第22条に違反した場合の「罰則」とリスク
風営法第22条に違反して摘発された場合、店舗や経営者には非常に重いペナルティが課せられます。リスクは「刑事罰」と「行政処分」の2つに分けられます。
刑事罰(懲役や罰金)
客引き行為(風営法第22条違反)に対する罰則は、風営法第53条に定められており、「6ヶ月以下の懲役、または100万円以下の罰金(あるいはその両方)」が科せられる可能性があります。
悪質な場合や常習性がある場合は、現行犯逮捕されるケースも少なくありません。
行政処分(営業停止)
警察による摘発後、公安委員会から重い行政処分が下されます。経営者にとって最も恐ろしいのはこの行政処分です。
- 指示処分: 違反行為を是正するよう指導される(イエローカード)。
- 営業停止処分: 40日〜長くて6ヶ月間程度の営業停止。売上がゼロになり、キャストも離れてしまうため、店舗の存続に関わる致命的なダメージとなります。
従業員の違反は「経営者の責任(両罰規定)」になる
「アルバイトのボーイが勝手に客引きをしただけ」という言い訳は通用しません。風営法には「両罰規定」が存在し、従業員が違反行為を行った場合、実行犯である従業員本人が処罰されるだけでなく、雇用主である法人や経営者も同様に罰金刑などに処されます。
店舗の責任者は、スタッフの行動を常に管理・監督する義務を負っているのです。
客引きに頼らない!適法かつ効果的な集客方法
客引きは摘発のリスクが高すぎる上、長期的な店舗経営にはマイナスでしかありません。これからの時代は、適法かつ効率的な集客方法にシフトしていく必要があります。
Web集客(SEO・MEO・ポータルサイト)の強化
現在のユーザーの多くは、スマホでお店を検索して来店します。
- SEO対策: お店の公式HPを作成し、「地域名+業態(例:新宿 キャバクラ)」で検索上位を狙う。
- MEO対策(Googleビジネスプロフィール): Googleマップ上でお店の情報が上位表示されるよう最適化する。
- ポータルサイト: ナイトレジャー専門の予約・紹介サイトへの掲載を充実させる。
SNS(Instagram・X・TikTok)の活用
キャスト個人の魅力や店舗の雰囲気を伝えるにはSNSが最適です。
日々の出勤情報や店内の様子を動画や写真で発信することで、客引きをしなくても「このお店に行ってみたい」「このキャストに会いたい」という来店動機を生み出すことができます。
キャスト・従業員へのコンプライアンス教育の徹底
まずは店舗内で「客引きは絶対に行ってはいけない」というルールを徹底し、新人スタッフに対して風営法やコンプライアンスに関する教育・研修を行うことが重要です。経営者がリスクを正しく理解し、従業員を守る体制を築きましょう。
まとめ:風営法22条を遵守し、クリーンな店舗運営を
風営法第22条で禁止されている「客引き」や「客引き目的のつきまとい」は、明確な違法行為です。
「他のお店もやっているから」「少し声をかけるくらいならバレないだろう」という甘い認識は、逮捕や営業停止という取り返しのつかない事態を招きます。
店舗を長く、そして安全に繁盛させるためには、法律を遵守し、WebメディアやSNSを活用したクリーンな集客へと舵を切ることが不可欠です。

